山間に古刹を行く
牛に引かれて善光寺参り、ということわざをご存じだろうか。
出先や他者の紹介で思わぬ導きに出会う事である。
この場合、必ず良い事にしか使われることはない。
昔、小県の信心のない老婆が、布をさらしていると牛があらわれて、布を角にひっかけ走りだし、
それを追いかけたおばあさんが、山越え、谷越え、善光寺にたどり着き、信心に目覚めるという故事が基になったことわざです。
信心に目覚めた老婆が、家に戻り近所の観音様にお参りすると、その山の岩肌に布を見、観音様の思し召しと、ますます信心深くする。
それが、小諸市大久保にある布引観音であるといわれています。
小県(ちいさがた)の名は、今話題の真田丸の最初の方で何度か耳にしたこともあるだろう。
現在は、市町村合併で長和町と青木村が小県郡の名を残しているが、真田・上田をはじめ、小諸の布引観音の麓辺りも含まれる。
そんな布引観音から今回の旅は、スタートしよう。
天台宗釈尊寺
http://www.kanko.komoro.org/midokoro/nunobiki.html
小諸駅より車で10分
奈良の東大寺の大仏建立に名を連ねた、行基大僧正が開き、聖徳太子にもゆかりがある古刹です。
懸崖造りの観音堂が、小さな清水寺ともたとえられることもあるとか。
さざれ石が織りなす山道に、善光寺まで続いているといわれのある洞穴もある。
写真は9月下旬だが、そろそろにぎやかに色づきはじめている頃ではなかろうか。
しかし、当日は、衰えない残暑の中、そこかしこにある水の気配に、涼を求める。
冬には、小さいながらも氷瀑に、自然の息吹を感じてもいい。
本数は多くはないものの、春には、すだれ桜の隙間から浅間山を仰ぐのも情緒がある。
境内にある布引伝説の牛の像
牛岩 牛の姿があらわている。確かによーく見ると…?
善光寺穴 善光寺まで穴が通じていると伝えられる
素朴さと豪華さを兼ね備えたおもてなしの観光列車で
長野までは「ろくもん」に乗る。
3倍速そうな色ですが、観光列車なのでゆっくりのんびり走ります。
車窓から、形を変えていく浅間山を眺めるのも一興です。
窓から車内を除くそこに「障子」、日本のもののはずなのに、なんだか異文化に出会ったようなカルチャーショック。
そして、木目調の落ち着いた車内や、おいしそうなお食事も目を引くが、車内や、駅々での「おもてなし」が純朴で、ひたむきで、うっかり涙ぐみそうになる。
時期か曜日かはたまた時間か、たまたま乗り合わせがなかったようで、本来なら子供用の木のプールを占拠し、足底に感じる木のボールで、足つぼマッサージをされながら、陽だまりで孫を眺めるかのようなゆったりとした時間を過ごすのだ。
駅々でのおもてなし
ろくもん(しなの鉄道)
http://www.shinanorailway.co.jp/rokumon/
豪華なお食事コースや
クルーズトレインもオススメ
庶民から戦国大名まで、長野に息づく、信仰を訪ねる
到着地は、善光寺である。
女人救済、庶民信仰、無宗派、と様々な二つ名を冠す善光寺さんは、仏教伝来とともに日本にやってきた最古の仏様と言われ、その言葉通り、身分問わず、性別問わず、宗派を問わず、数多の人々の救いになったに違いありません。
歴史をひも解いてみれば、教科書で見た有名な名が、参拝者、寄進者として名を連ねます。
戦国時代には、武田信玄公によって甲斐へ、織田信忠氏によって岐阜へ、徳川家康によって遠江、太閤秀吉によって京都、そして長野に帰還します。
遠く天竺、百済から海を渡り、日本の歴史を見守ってきたのではないでしょうか。
善光寺にももれなく牛が
善光寺
http://www.zenkoji.jp/
境内・参道含め、見どころはたくさん。
お戒壇めぐり
善光寺七福神めぐり
山門では、四国八十八ヶ所霊場御分身仏をお参りすることができます。
日帰りで足りない方には、宿坊もあるようです。
宿泊して、じっくりと信仰に浸ってみるのもいいのではないでしょうか。
布引から善光寺の距離は、54km(googleMAPで徒歩換算)
この距離を歩く催しが、善光寺御開帳にあわせて7年(数え年)に1度開催されます。
直近は2015年なので、次は2021年。
布引伝説ウォーキング 64km
現在特設ページはない様子。小諸市観光協会 http://www.kanko.komoro.org/
戸倉上山田発の30kmコースの毎年開催される善光寺詣りもあります。
牛に引かれて善光寺詣り
千曲市観光協会 http://chikuma-kanko.com/
こちらは両方とも新緑の5月に開催されています。
健脚に自信のある方は、ぜひ長野の自然を歩いてみてください。
定番から、小粋まで。とりどりの食とお土産に逡巡
そば処で有名な長野だが、肥沃な善光寺平を擁する長野が、それだけのはずがない。
県全体でも地産池消を掲げる自治体が多く、農作物をはじめ、滋味豊かな土地である。
海がない分、もちろん他県にも支え、支えてもらって、食を楽しむことができるのだ。
特異なところでは昆虫食すら残る、長野の食の懐の深さを、是非体感いただきたい。
炉辺で地元民とおしゃべりを楽しみながら、いただく縄文おやき。
言わずと知れた、信州みそに蕎麦。
りんごで育った信州牛。
野山の生んだ、胡桃や山菜、キノコ。
新鮮な野菜を使った、フレンチやイタリアンまで。
迷いに迷い、今回は、イタリアンのランチをセレクト。
THE FUJIYA GOHONJIN
藤屋御本陳
http://www.thefujiyagohonjin.com/
前身は将軍家光の時代から続く、老舗の旅館。
文化財にもなっていて、披露宴もできる雰囲気ある建物です。
情緒ある中庭を眺めながら、おいしいお食事を楽しむ。贅沢な時間です。
優柔不断な旅人に、定番と安定の八幡屋磯五郎で。
八幡屋磯五郎
https://www.yawataya.co.jp/
お土産に、七味の味のマカロンを求めます。
ピリリとしたスパイスの風味と、甘さのとりあわせに舌鼓。
併設されたカフェでは、さすが調味料を扱うお店と、カレーが絶品。
自分用にガラムマサラとハチミツ生姜もget!
深まる秋を感じる長野旅
今回のルートはこちら。
長野の冬の訪れははやく、夏の暑さが引いたと思えば、いつの間にか朝晩の涼しさに冷気が混ざりはじめます。
その一瞬に訪れる、鮮やかで実り多い秋の信州に是非足を運んでみませんか。